かえるの歌が
ケロー、かえるです。
ぼくは今かえる鍋を調理しています。
ただ、入れる食材を間違えてしまいました。
それはぼくの指先でした。
両手首のつま先を師匠に掴まれて
引きずり込まれる感覚はとても生きた心地がしました。
ぼくは立派なコックにはなれない。
コックコック ケロケロケロケロ
コックコック……
かえる鍋になったぼく
食材にならずに大人になってしまったぼく
みんなはどう期待しているのだろう
自分はなにを期待しているのだろう
どんどん体が沈んでいく
グツグツと鈍い音を立て、
熱い 暑いよ
誰かに喉を絞めつけられて、ぼくもお返しに負けじと絞めてやる。苦しめられるのが悔しいから絞めてみせる。
誰も実在しないからこそ出来ること。
パッと飛び起きたら汗だくのぼくしかいなかった。
死の感覚ってこんな感じなんだ。
それに支障なんてないけれど、メダカの国をみたときは正直嫉妬した。
指先からどんどん鍋に浸かっていき、生贄にもなりきれない中途半端なぼくだけど、感覚だけでも残っていたのかと思ったら少しは救われた。
晴れやかな気持ちにさえならないけれど。
いま頑張れば多少の道すじならあるのかもしれないとか。
若いオタマジャクシだった頃は、これから数ヵ月後にはサナギになって、のちに雲を羽ばたいていけると確信していた。
ぼくでもデビューできるはずだって。
その保証はないよとはっきり言われたときは今を辞めちまいたくなった。
職業をまっとうしていたあの頃と類似していて、いつ辞めようか、今月までには続けようか。繁忙期までは頑張ろうかとか。そんな発想にもなったし。死ぬほど苦しいよ。死ぬほど嫌だよ。逃げたいよ。
それを少しでも払拭してくれたのは紛れもないメダカだったのだけれども
未だ何1つ解決しちゃいないのも現実だ。